ブルダン名物・グリーン野菜のピデ
デニズリ中心では、あまり郷土料理的なものはあまり触れることが出来なかった。
市役所の文化課の担当者との話の中で、ブルダンという町を紹介された。
どこかデニズリの中でも地方へ行ってみたかったので、とてもいい機会になると思い、決断。
デニズリの地方と言っても、東西南北あるし、その地方によっても特色が違いわけなのだが、それを言い始めるときりのない話になる。
いつものように旅のご縁に従い、デニズリの西部のブルダンへ。
ここは西部のアイドゥン県に近く、よりエーゲ海の特徴を持つ。
バスターミナルから中型バスで1時間程。
道中にはブドウ畑が多くみられ、収穫し、大型トラックに積み込んでいる光景も目にした。
デニズリはワイン工場もある事から、多くのブドウが栽培されているのも納得がいった。
西側に大きな山を背にブルダンはそのふもとにある、とてもこじんまりとした町。
ここは綿を糸にして、機織り機でタオルや生地にする地としても有名なのだそうだ。
綿100%の服やハマム(トルコ風呂用の腰巻)などを売る店が軒を並べている。
デニズリにいる20年来のトルコ人の友人アザッドも、ついて来てくれ、一緒に昼ご飯となった。
現地の人に聞くと、オトゥル・ピデが名物というので、早速店へ向かった。
オトゥルとは、グリーン野菜の総称ともいえる。
夏のこの時期にはフダン草をメインにして、エベギュメチ、青ネギ、ポロネギ、パセリに卵、2種類のチーズを混ぜて具を作る。冬はホウレンソウがメインだそうだ。
昼時で、テイクアウトの注文と、店内、配達も含めて大忙し。
職人が手分けして一気に数百のピザを作り上げる。
具をピデ生地において、両サイドをふさぎ焼く。
きつね色に焼きあがった、見事なオトゥル・ピデ。
見た目と天然バターのあまーーい香りに、食欲も一気に増進。
外はパリパリ。具も野菜だけながら、物足りなさも感じないし、手と口は休む暇がない。
ホウレンソウと玉ねぎ、チーズ、卵のピデはあっても、4,5種類グリーン野菜が入っているのは、今まで見たこともなかった。
肉がなくても、野菜をふんだんに使えるエーゲ海地方ならだろう。
アザッドがゴマペースト入りのピデをデザートに食べようというので、それにも挑戦。
ピデ生地にもペーストと油を加えて練りこんで、平らにした後にも表面にもべっとりと塗る。
焦げ付くから、新聞紙の上にのせて窯へ。
すると、ペーストの表面が小さな気泡でいっぱい。
熱々加減が伝わってくる。
仕上げには、たっぷりの蜂蜜と砕いたクルミが。
食べやすいように、ひし形に切ってくれているのもありがたい。
僕はすでに激甘だとされるバクラワも美味しいと感じているし、激甘に見えるデザートもうまそーーーと思えるようになってきている。
では早速一口!
こ、これはーーー。
ターヒンリ・ピデランキングで、初出場で初のトップに!
こんなにバランスの取れたピデに出会った事がない。
クルミと蜂蜜が惜しげもなくかかっていて、
カトメル状になったピデ生地の食感が残っている。
ゴマペーストも熱を入れることで、きな粉のような香りと味に。
きな粉餅を食べているようで、とても親近感を感じながらも質の高さに感服。
砂糖なしのチャイと共に食べるターヒンリピデは別腹だった。
今でもこの味を思い出すと恋しくなる。
Tadı damakta kalsınという言葉通り、味は口蓋で残るように!
トルコでの当たり飯は記憶に残る。
やはりそれは職人の努力によるもの。
ブルダンを選んで正解、選ばせてもらえて幸運。