タンドールの後に
トルコのカッパドキア地方・ネブシェヒールでは、9月中旬から冬に向けての保存食作りが盛んになる。
その中でも、タンドールと呼ばれる土で作った窯を使ってのユフカ(薄焼きパン)作りと、ブドウ栽培が盛んな地域ならではのペクメズ作りがその代表と言える。
タンドールの上に鉄板を置いて、下から火を燃やしながら焼く。
家族や近所が共同作業で行う場合も多い。
というのも、ユフカ作りは何十枚も何百枚も作らなければならないからだ。
それを上に重ねていき、食べる時には水をふりかけて湿らせて食べる。
乾燥した地域だから、薄焼きのパンの保存もきく。
乾燥したものでも、手持ちにあれば、いざというときに簡単な食事になる。
ペクメズもまた重要な冬の保存食の一つ。
ぶどうの果汁を絞って、それを煮詰めて出来る濃厚なシロップともいえる。
朝食でパンに浸して食べるほかに、冬に風邪を引いて喉が痛くなったら、そのまま舐めたりする。料理においては、カユス・ヤハニと呼ばれる、アンズと肉、ひよこ豆をペクメズで煮るというものがある。デザートは煎った小麦粉にペクメズを加えて、練り菓子を作ったりする。
使い勝手のいいペクメズは、保存食の中でも優先順位は高い。
ユフカしかり、ペクメズしかり、これらはタンドールや窯を必要とし、大きな火力もいる。
その作業が終わる頃には、薪もおき炭に変わっている。
その炭を無駄にすまいと、そこへじゃがいもを放り込む。茄子もついでに放り込む。
そこでチャイをそこで沸かしたり、土製の鍋に白インゲンを入れて、じっくりコトコト煮込こんだり。
じゃがいもがホクホクに出来上がると、おばあさんがそれを手で真っ二つに割って、ドライミントと赤唐辛子、塩を振り、また元に戻してなじませる。
ほれっ、食べてみ!と勧めてくるおばあちゃん。
白インゲンも出来上がると、土鍋から出して、みんなで頂いた。
弱火の炭でじっくり煮込んだ柔らかい豆、ほっくりした芋、やわらかいお湯で作ったお茶。
素朴なものばかりだが、どれをとっても愛情が感じられる優しい味がする。
昔、実家で手作りの豆腐やこんにゃくを作った時や、薪で炊いた風呂を沸かした時など、そこで出来る炭を七輪へ入れて煮物を作ったりしていたことを思い出す。
トルコも日本もしていることは同じで、より身近に感じたのだった。