中国新聞・海外メールに”ガチョウ料理 人々結ぶ”の記事を解説
中国新聞・海外レポート
第23回目 ”ガチョウ料理 人々結ぶ”
これは2011年にサムスン県のハウザ県に訪れた時のレポートです。
トルコではガチョウ料理で有名なのはここよりもカルス県です。
2010年、カルスでもガチョウを食べたのですが、その時の季節が夏でした。
冬に脂ののったガチョウを処理して冷凍保存したものでした。
郷土料理を出すレストランなので、年中名物料理を提供するにはこれしかありません。これは仕方のないやり方ですね。
もちろん、その時はその時で美味しいと思いました。
ただ、今回縁あってサムスンのハウザを訪れることになり、ここにもガチョウ料理があるというのを知ったのです。
冬の季節がガチョウの旬なので、それに合わせて訪れることにしました。
ハウザは小さな街なので、カルスのレストランのように1年中ガチョウを提供する店などありません。
そもそもそんなこと考えないでしょう。
市長の秘書と仲良くなっていたので、予めコーディネートしてくれたみたいです。何と招待客という形で。
市長さんや村長さんが集まる会議も兼ねて、ガチョウ料理が振舞われる事になっていて、そこにお客として招かれることになりました。
そこで目にしたのは、旬のガチョウが目の前で調理され、炎の前に吊らされて、ぽたぽたと滴り落ちるガチョウの脂をこの目で見ることになったのです。
カルスもそうですが、ここハウザもガチョウを使ったティリットという料理が有名です。
ティリットとは、肉から取ったスープや脂を、パンに浸して旨みを移して食べる料理のことを言います。トルコ全土でもティリットという料理は定義は似ているのですが、その種類はいろいろあるので、ここで説明するのは割愛しておきます。
ガチョウを火であぶり、脂をしっかりとっておいて、その脂で挽き割り小麦のピラフを作ります。同時にユフカという薄焼きパンにもその脂を擦り込んでおきます。そしてガチョウは肉と皮を丁寧にほぐしておきます。
大きなトレイにピラフ、その周りにユフカを並べ、ピラフの上にどっさり肉をのせて完成です。
ごっつい料理が出来上がりました。そして見た目はとてもシンプルで単色。
そんなに美味しそうには見えませんね。
食べる時には、出てユフカを持って、肉やピラフを掴むようにして包み、口へと運びます。
食べてみると、ガチョウの脂分はさすがです。
鶏肉や七面鳥のそれとは比較になりません。
鶏に似ているようで、全く肉質も違うのです。
肉は赤肉、脂もずっしりと濃厚な脂で、旨みがダイレクトに来ます。
これぞ!と思いましたね。
カルスで食べたものがとてもチャチナものに思えました。
それは仕方のない事でしたが、ここで食べることが出来たからこそ、本当の美味しさを理解できたわけです。
ハウザは内陸で、冬はとても寒い。だから脂を体に蓄積する。
1泊村長さん宅に泊めさせて頂くと、やはり家にはガチョウが何羽も飼われていました。
冬には、近所や知人で持ち回りでティリットを作るそうです。
冬のイベントも生活に根付いていました。
年中提供できるレストランで食べることも、食べられないよりは、はるかにいい事だけど、文化としてあじわうことが出来ない。
一つの食文化として、現地に村の人達と分かち合えるのが、私にとって貴重な体験なのです。
それではレポートをお読みください。