スルック・ケバブの仕込みを見学
ドゥラアンには名物スルックケバブを出す店は数店。
スルックケバブのスルックとは竹竿。つまり竿を子羊に突き刺して、回しながら焼く肉料理である。
紹介していただいた店に夜の8時に来なさいと言うアポを取っていた。
まずは店主を含め、その家族と顔合わせ。
トルコによくある習慣。
そしてまずはお客さんに腹ごしらえと言うので、そのケバブをごちそうになり、その後でセマーウェルを使ってチャイを入れてもらった。
チャイを飲みながら、まずは店主が僕が何者か?どんなやつか?と交流を始める。
職人としてのプライドがあるから、この料理も調べに遠く日本からやって来たこともあり、見たいという意思もすぐに伝わり、話もすぐに盛り上がった。
店主の息子たちもちょうど帰省しており、店を手伝っていて、みんなでチャイを囲みおしゃべりで交流し合った。
セマーウェルというお茶入れも、現在広まっているガスコンロの上で作るものではなくて、おきた炭を中に入れて湯を沸かし、その蒸気でお茶を蒸す。
子羊を焼く際に出る炭をこのセマーウェルに入れてお茶を作る。
秋口の冷えた夜にはもってこいのお茶だ。
準備の見学よりも、まずはお互いを知り合う事が大事。
心の行き来、お互いがおしゃべりを通じて呼吸をし合う。
その呼吸がスムーズに行けば、物事もスムーズに、そしてより広がっていく。
トルコで何が大事かって、この始めのお互いを知る所が本当に重要だと思う。
自分で言うのもなんだけど、自分がトルコの呼吸に合わせられるのか、それともいつの間にかその感覚を自分で身に着けたのかわからないが、それは得意とするところとなった。
さて、1時間以上のおしゃべりもほどほどに、仕込みへと入った。
6~7か月の子羊の頭を取った状態で竿に刺す。
頭はこの店では焼いていないが、これらをまとめてステンの箱に入れて、パン屋の窯でオーヴン焼きするという。
出来上がると、店頭でケッレという商品として売るのだそうだ。
回転が上手く行くように、脚と交差させ、手は切って、こうさせた脚へ刺す。
刺した手の部分は、焼きあがった時に、シェケルレメと言って、お客さんへの味見用にするそうだ。
その後内臓を取ったお腹の部分は、糸で縫う。
縫う前に一掴みの塩を腹の中に擦り込む。
縫わなければ、焼く際、すぐに中に火が通って焦げてしまうという。
紐で縫って空洞にしておくことで、蒸気で柔らかくゆっくり焼けるという。
子羊の中でも小さいものは脂身も少ないので、内臓の脂分で表面を覆って焼くのだそう。通常はこのままじっくり薪の火で3時間回しながら焼くらしい。
明日は町の中心で週に1度の市場が開かれるので、1頭多い3頭焼く予定。
3頭すべて同じ工程で準備完了。
塩味もほんのり程度で、ソースも味付けもなく、そのままあぶり焼きするようだ。
まさに原始的なドネルケバブである。
明日の早朝7時に火をつけ始めるとのことで打ち合わせも完了。どんな焼け方をするのかが楽しみだ。
その後知り合った方たちとお酒じゃなくて、チャイで夜中まで語り合った。